近年、企業の社会的責任や倫理的な行動は消費者の購買意欲やブランドへの評価に大きな影響を及ぼしています。そのようなエシカルな影響を利用したマーケティング「エシカルマーケティング」の手法として特に注目を集めるのが、コーズリレーテッドマーケティング(CRM)と言われる手法です。
コーズリレーテッドマーケティングは、企業と消費者が共に社会のために貢献できる新しいマーケティングの形です。
目次
コーズリレーテッドマーケティングの定義
コーズリレーテッドマーケティング(Cause-Related Marketing、略称CRM)とは、企業と非営利組織(NPO等)または特定の社会的課題が提携し、商品やサービスの販売を通じてその社会的な課題を支援するマーケティングの形態です。具体的には、寄付つきの商品を販売し、売上の一部をNPO団体に寄付するといった具合で実施され、下記の要素を含んでいます。
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営利・非営利双方向の利益
企業はブランドの認知度や評価を向上させることができ、非営利組織や原因は必要な資金や支援を受け取ることができます。
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明確な提携
商品やサービスの一部の売り上げが特定の原因やプロジェクトに寄付されることを明示的にコミュニケーションします。
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社会的価値の創出
単に利益の追求を目的とするのではなく、社会的な価値や変化をもたらすことを重視しています。
コーズリレーテッドマーケティングの注目度の上昇
企業の社会的責任や倫理的な行動が、近年で急速に消費者の購買意欲やブランドへの評価に大きな影響を及ぼすようになっています。多くの企業がCRMを導入し、自社の商品やサービスと特定の社会的な「原因」や「目的」を結びつける戦略を展開することで、CRMの注目度は増々上昇してきています。
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消費者の意識の変化
環境問題や社会的な問題への関心が高まる中、消費者は自らの購買活動を通じて社会貢献をしたいと感じるようになっています。消費者庁の2020年の調査では、エシカルな商品サービスを購入、又は購入意向があると答えた消費者は81.2%です。情報の受信・発信ともにしやすくなった現代では、企業の社会的な取り組みや持続可能性へのコミットメントが、製品の購入動機となることも増えています。
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ブランドの差別化
インターネットの普及により、消費者は全世界の商品を一度に比較することが容易になりました。比較による競争が激化する現代の市場において、企業は今まで以上にブランドの差別化を図る必要が出てきています。コーズリレーテッドマーケティングは、企業が社会的な価値を提供しながら、ブランドイメージを強化する手段として効果的です。
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社会的な課題への取り組み
企業は単に利益を追求する存在ではなく、社会の一部としての役割を果たすべきだとの認識が広まっています。コーズリレーテッドマーケティングを通じて、企業は社会的な課題解決に貢献しながら、その取り組みをPRすることができます。
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デジタルメディアの影響
SNSやオンラインメディアの普及により、企業の取り組みや活動は瞬時に多くの人々に伝わるようになりました。コーズリレーテッドマーケティングは消費者参加型の取り組みであるため、シェアされる機会が増える手法です。そのため、企業の社会的な取り組みが評価され、認知度の向上、イメージアップなどの効果が期待できます。
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長期的な経営視点
コーズリレーテッドマーケティングの取り組みは、短期的な利益よりも長期的なブランド価値や顧客ロイヤルティの向上を目指しています。多くの企業が、持続可能な経営の重要性を認識し、コーズリレーテッドマーケティングをその一環として採用しています。
以上のように、消費者の意識の変化やブランドの差別化の必要性など、さまざまな要因が絡み合い、コーズリレーテッドマーケティングの注目度が上昇しています。これは、企業が今後も継続的に取り組むべき重要なマーケティング戦略と言えるでしょう。
メリット・デメリット
コーズリレーテッドマーケティングは、エシカルマーケティングの中でも比較的導入しやすい手法です。活用を行うことで企業活動においても大きなメリットを得られる可能性は大きいです。下記にコーズリレーテッドマーケティングのメリットとデメリットをまとめます。
メリット
ブランドイメージの向上
企業が社会的な取り組みを行っているというポジティブなイメージが消費者に伝わり、ブランドの好感度が向上する。
顧客ロイヤルティの強化
購入を通じて社会的な原因を支援できるという動機が付加されることで、顧客のロイヤルティが高まる。
新規顧客の獲得
社会的な取り組みに興味を持つ新たな顧客層を引きつけることができる。
売上の増加
コーズリレーテッドマーケティングキャンペーンにより、製品やサービスの売上向上が期待される。
従業員のモチベーション向上
企業の社会貢献活動に関わることで、従業員のモチベーションや結束感が高まる。
パートナーシップの機会
非営利組織や他の企業との提携により、新たなビジネスの機会を生むことができる。
比較的導入がしやすい
寄付先を決めれば始められるため比較的開始するのが容易です。売上の一部を寄付する形が多く、追加費用をかけずに導入することもできます。
デメリット
多くのメリットがあるコーズリレーテッドマーケティングですが、適切な取り組みを行わないとデメリットも発生する可能性があります。
信頼の損失
社会活動が表面的であったり、誤解を招く情報が伝えられた場合、消費者の信頼を損なうリスクがある。
コスト増
社会的な原因への寄付やキャンペーンの実施にコストを掛けすぎてしまう。
提携先との摩擦
非営利組織やパートナーとの目的や方針が一致しない場合、摩擦やトラブルが生じる可能性がある。
継続的なコミットメント
一度始めると、継続的な寄付やサポートが求められるため、長期的なコミットメントが必要となる。
以上のように、CRMは多くのメリットを持つ一方で、適切に取り組まないとデメリットも発生する可能性があります。そのため、真摯で透明性のある取り組みが求められます。
エシカルマーケティングは従来のマーケティングとはアプローチが異なるため、こうしたメリットデメリットへの対応が必要です。エシカルマーケティングを専門で扱う企業もあるため、導入や運用には専門家の手を借りることも効果的で持続可能な戦略運用のためにおすすめです。
まとめ
CRMの価値とその重要性
コーズリレーテッドマーケティング(CRM)は、社会的な原因をサポートすることを目的としたマーケティング戦略として、現代の消費者の意識や企業の社会的責任に応える手段として注目されています。CRMの導入には、ブランドイメージの向上、顧客ロイヤルティの強化、新規顧客の獲得などのメリットが期待される一方、誤った情報の伝達や不透明な取り組みによる信頼の損失といったリスクも伴います。
企業としての次の一歩
コーズリレーテッドマーケティングは現代の企業が取り入れることによって非常に効果を発揮するマーケティング手法です。エシカルマーケティングの中でも比較的導入がしやすく、企業として始めるに適した事業戦略です。
導入にあたっては、以下のステップを参考に検討して頂くと良いでしょう。
- 社会課題の選定: 企業の価値やミッションに合った社会的な課題を選ぶ。
- 透明性の確保: 取り組みの進行や成果、寄付の額などを公開し、透明性を確保することで信頼の構築を図る。
- 持続的なコミットメント: 期待される継続的な取り組みに対し、長期的な視点での計画を用意する。
- 顧客とのコミュニケーション: コーズリレーテッドマーケティングの活動やその成果を顧客やステークホルダーに効果的に伝えることで、理解と支持を得ていく。
最終的に、コーズリレーテッドマーケティングはただのマーケティング戦略以上のものとして捉えるべきです。企業の売上・利益以上にも、社会的な役割と責任を果たす手段としての価値があります。真摯に、そして継続的に取り組むことで、その真の価値を最大限に引き出すことができる手法です。
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